新型インフルエンザとは、従来は、人へ感染しづらかった新しいタイプのインフルエンザのことです。動物のみに感染していたインフルエンザウイルスが、偶発的に人に感染し、遺伝子の変異により人の体内で増えることができるようになり、さらに人から人ヘと効率よく感染するようになったものを指します。人類が遭遇したことのない未知のインフルエンザウイルスを病原体とするため、一般にヒトが免疫を獲得しておらず、世界的かつ急速な蔓延により多くの人の生命及び健康に重大な影響を与える恐れがあります。 今回、大流行している新型インフルエンザA(H1N1)は、基礎疾患(糖尿病、ぜん息等)を有する者が重症化する傾向にあり、致死率も従来の季節性インフルエンザに比較し、遥かに高いことが報告されています。
新型インフルエンザの発生経路
新型インフルエンザウイルスが発生する経路としては次の3つが考えられます。
人の体内で2種類のウイルスが交わり発生
人が、鳥インフルエンザウイルスと人の間で流行する通常のインフルエンザウイルスの両方に同時に感染し、体内で両方のウイルスの交雑が起こることで、新型インフルエンザウイルスが出現する。豚などの動物の体内で2種類のウイルスが交わり発生
鳥インフルエンザウイルスとヒトの間で流行する通常のインフルエンザウイルスの両方に豚などが同時に感染し、体内で両方のウイルスの交雑が起こり、新型インフルエンザウイルスが出現する。感染伝播する過程で発生
鳥インフルエンザウイルスに感染した人の体内でウイルスの変異が進み、ウイルスが人から人に感染する能力を持つことにより、新型インフルエンザウイルスが出現する。通常の季節性インフルエンザは、多くの人がある程度、免疫をもっているため大流行には至らないケースが多く、また、ワクチンが既にあるため、ワクチンを接種する事によって感染しても重症化を防ぐことができます。 しかし、新型インフルエンザは、未知のインフルエンザウイルスのため、多くの人に免疫がなく、既存のワクチンも効かない事が多いので、大流行の危険性があります。
インフルエンザとは?
インフルエンザとは、インフルエンザウイルスによる感染症です。毎年、冬季に流行する季節性インフルエンザは、A型、B型、C型に分類されるウイルスによって引き起こされる病気で、風邪よりも比較的急速に高熱・悪寒・筋肉痛・全身倦怠感などを発症します。通常のインフルエンザは、ワクチンを接種することで、感染を防ぐ、もしくは感染しても軽症で済ませることが出来ます。
インフルエンザウイルス
インフルエンザウイルスは、原因となっているウイルスの抗原性の違いから、A型、B型、C型に大きく分類され、このうち流行的な広がりを見せるのはA型およびB型です。 A型ウイルスは、144種類の型(亜型)に分類することができ、毎年のように変異が起こるため、以前にA型ウイルスに感染し、免疫を持っている人であっても感染しやすく、流行を繰り返しています。現在、人の間で毎年流行しているものには、A H1N1(ソ連型)及びA H3N2(香港型)があります。A型ウイルスは、人以外に鳥類や豚などにも広く分布しているため、人と動物の共通感染症であり、近年では、渡り鳥がインフルエンザウイルスの運び屋として注目を浴びています。 B型ウイルスは、A型ウイルスのように大流行することはなく、散発的に小規模の流行が起こるのが特徴です。また、遺伝子が安定していて変異が少ないため、ワクチンなどによる免疫が長期間続きます。
鳥インフルエンザ
鳥インフルエンザとは、鳥類がインフルエンザウイルスに感染することをいいます。通常、水鳥はインフルエンザウイルスを保有していても、発症することは稀ですが、ニワトリや七面鳥など家禽に感染した場合、強い毒性を示し、時には死に至ることもあります。この鳥インフルエンザに感染した鳥類やその死骸(その他、排泄物・唾液など)と接触することで、ヒトに感染する危険性があります。1997年より発生が確認され、現在でもアジアを中心にジワジワ拡大しているH5N1型が世界的大流行を引き起こす可能性が高いと考えられています。
豚インフルエンザとは?
豚インフルエンザとは、豚がインフルエンザウイルスに感染することをいいます。致死率は高くありませんが、豚の間では定期的に流行を起こしています。豚は豚インフルエンザ以外に、人や鳥のインフルエンザにも感染するため、豚の体内で別の動物種のウイルスが混じり合い、人にも感染する新型インフルエンザが発生する危険性があると以前から考えられていました。
大流行中の新型インフルエンザA(H1N1)の特徴
今大流行中の新型インフルエンザ(2009年4月発生)は、インフルエンザA(H1N1)で、弱毒性といわれていますが、季節性インフルエンザが高齢者が重症化して死亡に至る例が多いのに対し、基礎疾患(糖尿病、ぜん息等)を有する者が重症化する傾向にあり、致死率も高いことが報告されています。発生当初、その遺伝子が豚インフルエンザのものに似ていることから、確認当初は豚インフルエンザと呼ばれましたが、その後、豚インフルエンザウイルスの遺伝子のほかに、鳥インフルエンザウイルス及び、ヒトインフルエンザウイルスの遺伝子も持つことが確認されています。現時点では、ウイルスの感染力やウイルスがもたらす病原性などについて未解明な部分がありますが、季節性インフルエンザと同様に感染力は強いものの、多くの患者が軽症のまま回復をしているとされています。一方で、糖尿病やぜん息など基礎疾患がある者や乳幼児、妊婦を中心に重症化する例が報告されています。尚、感染を繰り返すことにより、ウイルスが変異し強毒性となる可能性もあります。
新型インフルエンザのパンデミック(限られた期間にある感染症が世界的に大流行すること)は必ず来ます。「もしも」ではなく「いつ?」なのです。なぜなら、新型インフルエンザは、多くの人が免疫を持っていないため、通常のインフルエンザに比べると、ウイルスに触れると感染する確立が高く拡大しやすく、また、ウイルスの感染力やウイルスがもたらす病原性等について未解明な部分があるため、新しいウイルスに対するワクチンの完成に5、6ヶ月の期間を要する可能性があるなど、予防も難しいからです。 また、2009年夏~秋、日本で大流行しているのはインフルエンザA(H1N1)型ですが、 アジアを中心に徐々に拡がっているといわれているH5N1型鳥インフルエンザは、強毒性(高病原性)で、多臓器不全を起こし易く、一説には致死率63%といわれています。また、感染力が高く、10代~30代の若い世代がより重症化しやすいため、パンデミックになったときの被害は図りしれないとも言われています。
パンデミックになったら・・・・
パンデミックになると、医療機関は手一杯、医療従事者や院内にも感染が広がり、医療体制が滞り、バスや電車などの交通機関、ゴミの収拾などの行政、食料品やガソリンなどの供給不足、ライフラインの制限などに至る可能性も否定できません。(H5N1型が発生した場合、厚労省の試算では、死者17万~64万人と推定、これらの状況は起こりうる可能性が極めて高い、と想定されています)企業も、行政も、個人も、あらゆる単位で準備をすすめ、被害を最小限にしなくてはなりません。
過去の発生したパンデミック
過去に発生したインフルエンザのパンデミックは、1918年のスペインインフルエンザ、1957年のアジアインフルエンザ、1968年の香港インフルエンザがあります。この中で最も多くの死亡者を出したのが、スペインインフルエンザで、全世界人口の25%~30%が罹患し、約4,000万人が死亡したと推計されています。
| 流行年度 | 1918~1919年 | 1957~1958年 | 1968~1969年 |
|---|---|---|---|
| ウイルスの型 | H1N1 | H2N2 | H3N2 |
| 通称 | スペインインフルエンザ | アジアインフルエンザ | 香港インフルエンザ |
| 世界死亡者数 | 4,000万人 | 200万人以上 | 100万人以上 |
| 国内死亡者数 | 39万人 | 7,700人 | 2,000人 |
こうした新型インフルエンザのパンデミックは10年から40年の周期で発生すると言われています。現在では、人口の増加や都市への人口集中、また飛行機などの交通機関の発達などから、非常に短期間に地球全体に蔓延し、大きな影響をもたらすことが予測されます。
新型インフルエンザA(H1N1)の感染経路は、毎年ヒトの間で流行するインフルエンザと同様で、飛沫感染と接触感染であると考えられています。
飛沫感染
感染した人が咳やくしゃみをすることで放出されたウイルスを含む飛沫(水滴)を、健康な人が鼻や口から吸い込み、ウイルスが粘膜に接触することによる感染。
接触感染
感染者の咳やくしゃみ、鼻水などの飛沫(水滴)が付着した物を、健康な人が手で触れ、その手で自分の眼や口や鼻を触ることによって、ウイルスが粘膜に接触し感染。
(参考)空気感染
感染者の咳やくしゃみ、鼻水などの飛沫(水滴)の水分が蒸発して乾燥し、長時間空気中を漂い、健康な人がこれを吸い込むことによって感染。現在流行中のH1N1インフルエンザの空気感染は、可能性は否定できないものの一般的に起きるとする科学的根拠がないといわれているが、H5N1型は空気感染もありうるといわれています。
突然の38℃以上の発熱と咳、くしゃみ等の呼吸器症状、また頭痛、関節痛、全身倦怠感など、通常のインフルエンザが持つ症状に加え、新型インフルエンザA(H1N1)では、嘔吐、下痢などの症状が現れることもあります。下記のうち当てはまるものが多くあれば、新型インフルエンザA(H1N1)である可能性が高いと考えられます。
| 急な38℃以上の発熱 | 全身の怠慢感 | 腹痛 | 息切れ |
| のどの痛み | 呼吸困難 | 頭痛 | 嘔吐 |
| 下痢 | 胸の痛み | 筋肉痛 | 眼球の痛み |
| 悪寒 | 鼻出血・歯肉出血 | 鼻汁 | |
| 関節痛 | 咳・くしゃみ | 顔色が悪い |
新型インフルエンザの感染防止策には、個人や家庭において普段から実施できるものが多くあります。この感染防止策は、通常のインフルエンザ対策としても有効な手段であり、普段から習慣づけておくことが大切です。
手洗い・うがい
外出からの帰宅後は、きちんと手洗い・うがいをすることが重要となります。手洗いは流水と泡立てた石けんや液体石けんを用いて15秒以上行うことが望ましいとされています。
咳エチケット
ウイルスは、感染者からの飛沫により周囲に拡散するため、咳・くしゃみをするときに、ティッシュなどで口と鼻を押え、他の人から顔をそむけることを心掛ける必要があります。
マスクの着用
マスクを使用することにより、ウイルスに感染する確率を下げることができます。また、感染者が、不織布製マスクを着用することで、咳やくしゃみによる飛沫の拡散を防ぐことができます。外したマスクを捨てる際にはマスクのフィルターに病原体が付着している可能性があるので、マスクの表面には触れず、紐を持って外します。また、使い終わったマスクはビニール袋に入れ、密封して捨てることが重要です。
感染者との距離の保持
感染者から適切な距離(2メートル以上)を保つことによって、感染の危険性を大幅に下げることができます。
清掃・消毒
感染者が咳やくしゃみを手で押えた後などに、机、ドアノブ、スイッチなどを触れると、その場所にウイルスが付着するため、その箇所を消毒する必要があります。
通常のインフルエンザワクチンの予防接種
新型インフルエンザ発生時に、通常のインフルエンザにかかった人が、新型インフルエンザに感染したと思い医療機関を受診した場合、医療機関において混乱が生じてしまう可能性があります。通常のインフルエンザワクチンを接種し、通常のインフルエンザに感染することを防ぐことで、こうした混乱の緩和につながります。
子どもへの教育
流行時には「友達と遊びに行く」、「マスクなしで外出する」などの行為をしてはいけないことを、子どもによく教育しておく必要があります。
人ごみを避ける
人ごみでは、多くの人と接触するため感染してしまう危険性があります。そのため、人ごみはできる限り避けることが重要です。
食料品・生活必需品等の備蓄
流行時には、食料品・生活必需品などの物流に影響が出ることが予想されます。感染を防ぐために、新型インフルエンザ発生後に、少なくとも2週間程度は、外出をしなくても生活できるよう家庭内備蓄を行っておく必要があります。
発熱、頭痛、咳、筋肉痛など疑わしい症状がある場合は、まず最寄りの保健所や、都道府県の健康担当部門にある相談窓口に電話で対応を相談してください。自己判断で医療機関に行くことは、感染を広げてしまう恐れがあります。電話相談では、「発熱外来」を設置している指定医療機関を教えてくれるので、そこで診察を受けます。診察を受けるまでは、家族や周りの人を感染させないために、必ずマスクをつけ、できるだけ外出を控えます。受診の際には、できる限り、公共交通機関の使用は避けましょう。 なお、家族が感染すると、他の家族も感染する可能性がでてきます。その場合、
などを心がけましょう。
WHO(世界保健機関)が定めるフェーズとは、新型インフルエンザの世界的な流行状況と警戒レベルを示します。パンデミック(世界的大流行)が起こる前から流行状況に応じて6つのフェーズに分類し、それぞれの対応等を規定しています。最も警戒レベルが高いフェーズ6は、人間社会に新型インフルエンザウイルスへの感染が拡大・持続している状態、即ち世界的大流行(パンデミック)を表します。フェーズの引上げ、引下げは世界の情勢に応じてWHOの事務局長が行います。
日本は、日本国内の実状に応じた戦略を検討するのに適した新型インフルエンザの流行の段階をWHO(世界保健機関)が実施するフェーズを参考に、新型インフルエンザ発生前から、海外発生、国内発生、パンデミック、小康状態に至るまでを5つの段階に分類しています。5つの段階は、基本的に国における戦略の転換点を念頭に定めたものであり、各段階の移行についてはWHOのフェーズの引上げ及び引下げを注視しながら、外国での発生状況や国内の状況を参考にして、新型インフルエンザ対策本部が決定し、公表します。
前段階(未発生期)
新型インフルエンザが発生していない状態
第一段階(海外発生期)
海外で新型インフルエンザが発生した状態
第二段階(国内発生早期)
国内で新型インフルエンザが発生した状態
第三段階
国内で、患者の接触歴が疫学調査で追えなくなった事例が生じた状態
※各都道府県での状況に応じた柔軟な対応のため、3つの時期に小分類し、その移行については国と協議の上で都道府県が判断
感染拡大期
各都道府県において、入院措置等による感染拡大防止効果が期待される状態
蔓延期
各都道府県において、入院措置等による感染拡大防止効果が十分に得られなくなった状態
回復期
各都道府県において、ピークを越えたと判断できる状態
第四段階(小康期)
患者の発生が減少し、低い水準でとどまっている状態